オフィスビルや商業施設などでよく耳にする「消防設備点検」ですが、その内容や必要性を身近なものと捉えている方は少ないかもしれません。
実は、延べ面積の広さなど一定の基準を満たした賃貸物件にも、この消防設備点検を実施する義務があります。
そこで今回は、賃貸物件での消防設備点検の内容や協力の義務はどうなのか、詳しくご紹介します。
賃貸物件で実施する消防設備点検の内容
小規模な共同住宅を除き、ある程度の面積があるほとんどのマンションやアパートでは、消防設備点検が法的に義務付けられています。
チェックするのは、賃貸物件に備え付けられている防災設備などが、正常に設置され使用できるかといった部分です。
こうした機器の維持管理と管轄の消防署長への報告は、消防法で義務付けられているだけでなく、入居者の安全に直結する大切なものと言えるでしょう。
点検には、半年に一度おこなう「機器点検」と、1年に一度おこなう「総合点検」があります。
半年に一度の機器点検で実施するのは、共用部分にある機器のチェックです。
具体的には、消火器・屋内消火栓・非常ベル・自動火災報知設備・スプリンクラー・避難はしごといった設備がきちんと設置されているか確認がされます。
一方、1年に一度の総合点検で実施されるのは、機器の設置状況だけでなく、機器が問題なく作動するのかなど、より詳細についてです。
この総合点検では、実際に機器を操作して作動状況を確かめる必要があるため、住宅各戸への立ち入りが必要となります。
法的義務のある賃貸物件の消防設備点検
賃貸物件の消防設備点検は、消防法で定められた義務ですが、その義務を負うのは管理者である大家です。
消防設備の維持管理の義務を怠り火災被害が出た場合には、防火管理上の義務違反とされ、罪に問われることもあります。
とはいえ、賃貸住宅の消防設備点検の作業には、大家のみならず各戸入居者の協力が不可欠と言えるでしょう。
なぜならば、総合点検で実施される室内設備の動作チェックは、入居者の立ち合いなくしておこなえないからです。
しかし、点検は平日に実施されることが多いため、仕事の都合が付かず室内の点検が未実施という住戸も少なくありません。
消防設備点検は入居者の義務ではないため、断っても罰則はありませんが、自分の部屋を火元として火災が発生し、被害が拡大した場合には注意が必要です。
もしも、点検を受けていない機器が被害拡大の原因だと判明したら、入居者が損害賠償などの大きな責任を負うことも考えられます。
そのため、忙しくて面倒に感じても、必ず消防設備点検には協力するようにしましょう。